本能的な休息
現代は夜にまとめて睡眠をとるのが一般的ですが、実は、もともと人は一日数回にわけて睡眠をとっていました。
19世紀におこった産業革命によって、まとまった勤務時間に分けて労働効率を上げるという考え方が広まったことで、睡眠も夜にまとめてとる文化が広まったと言われています。
とある実験によると、毎日14時間、暗闇状態の部屋に入れられた被験者の睡眠パターンを観察したところ、約4週間目で、4時間寝たところで目を覚まし、起きた状態が1~2時間続いた後でまた再び4時間寝る、という睡眠パターンとなっていきました。
つまり、外的な影響を受けない状況下にあれば、人間の生理的本能は、睡眠を数回にわけてとるということが証明されました。
また、現代人の脳は、昼過ぎ頃に自然と眠気が出る仕組みになっています。
昼ごはんを食べた後に眠たくなるのもその証左です。
これらのことから、人間は夜の睡眠だけではなく、日中にも短めの睡眠をとって脳パフォーマンスを保つという本能があると言えます。
本能に逆らわないリカバリーテクニック
であれば、この本能に逆らわずに仮眠をとる時間を確保することが、
昼間のハイパフォーマンスや夜のハイリカバリーにも繋がると私たちは考えています。
そこで、我々が提唱している「CRP」という方法で、仮眠を計画的にとって頂くことが重要となってきます。
CRPとは、 Controlled Recovery Period の略で、
日本語にすると「計画的にとる短めの仮眠」と考えてもらえればOKです。
最近では「パワーナップ(昼寝・仮眠)」という言葉も聞かれたりするかもしれませんが、同じようなものだと考えてください。
NASA(アメリカ航空宇宙局)が、宇宙飛行士に、26分間の昼寝をとらせた結果、認知能力が34%上昇し、注意力も54%上がったという実験があります。
仮眠をとらずに連続で作業するよりも、短時間の仮眠を挟んだ方が作業能率が上がる、ということで、GoogleやApple、Microsoft社などが、従業員に仮眠を勧めています。
それほどの効果が期待できる「CRP」ですが、ただ眠たい時に仮眠をとれば良い、という単純な話ではないんです。
CRPの設計方法
1日の中で「どの時間帯」に「何分程度行うのか」を、計画的に毎日のルーティンにしていくことを推奨しています。
タイミング
いい睡眠をとるためのベースは「体内時計を整えること」です。
つまり、昼寝においてもいかに毎日を規則正しく過ごせるかがカギになるので、CRPをとる時間はある程度決めておきましょう。
例えば、出来るだけ毎日12:00~13:30の間に●分のCRPをとる、というイメージです。
長さ
次に大事になるのが、CRPの長さです。
これは個人差がありますが、成人であれば20分程度に設定しましょう。
中高生であれば10~15分を目安に!
小学生は7分程度と言われており、高齢者は30分程度を目安にすると良いでしょう。
あくまでも目安ですので、その人にあったCRPの時間を見つけて設定していくのもスリープコーチの仕事の1つです。
CRPの重要ポイント
少し難しい話をしますが、睡眠に入ると脳は、
ノンレム睡眠1→ノンレム睡眠2→ノンレム睡眠3→ノンレム睡眠4
というように、階段を下りるように深く入っていきます。
ノンレム睡眠1は、まだまだ浅い状態で、本人も眠っていたという自覚がないことが多い睡眠状態です。
周りから見ていると明らかに眠っていたのに、本人は「寝そうになった」などと言っているのを見たことありませんか?それはノンレム睡眠1の状態で目を覚ました証拠です。
ノンレム睡眠3まで入ると本格的な睡眠に入っていくので、脳の温度が下がりだし、完全に休息モードに入ります。
そうなってしまうと逆に、起きたくても起きられない状態になってしまいます。
「1時間だけ寝てから勉強しようと思ったのに気がついたら朝だった」という経験はありませんか?
つまり、CRPのポイントは「いかにノンレム睡眠2の状態で起きられるか」なのです。
子供やお年寄り、ショートスリーパーと言われる人を除くと、平均的に20分程度がちょうどノンレム睡眠2にあたるため、深すぎず浅すぎず、しっかり脳がリフレッシュできて、スッキリ起きられる、というわけです(もちろん個人差があるので、20分でも深い睡眠の入ってしまうことがあるので注意してください)。
その他にも、CRPを行う上で重要なことはたくさんあります。
詳しいことは講座でお伝えしております。